毎年梅雨時期になると増えてくる「水虫」。足の指がむずむず、皮がむける…そんな症状が現れたら要注意です。水虫は放っておくと悪化し、他人にもうつることがあります。今回は、水虫とはどんな病気か、原因や症状、感染の仕組みなどについて詳しく解説します。
目次
■水虫とは?白癬菌による皮膚の感染症
水虫とは、白癬(はくせん)菌というカビの一種が皮膚に感染して起こる病気です。
◎白癬菌とは何か
白癬菌は、ケラチナーゼという酵素を分泌して角質層に侵入します。この酵素は、角質層に含まれるケラチンというたんぱく質を溶かす働きがあります。ケラチンは皮膚だけでなく、爪や毛にも含まれるため、白癬菌は体中のさまざまな部位に感染します。
◎感染しやすい部位
感染の約9割が足に集中しています。これは、足が靴や靴下で長時間覆われることによって高温多湿の環境が作られ、白癬菌が繁殖しやすくなることが理由です。
足の指の間、爪の下、足の裏やかかとは湿度が高く角質層が厚いため、白癬菌にとって好都合な部位といえます。手のひらも角質層は厚いものの、洗う機会が多く湿気がこもりにくいため、感染率は低くなります。
足白癬は男性に多いイメージがありますが、近年は、女性の社会進出やファッションの影響で、長時間靴を履く女性が増え、ブーツの着用も増えました。そのため男女差はほとんどありません。
■水虫の原因 ~うつるしくみと感染経路~
感染は、菌との接触に加えて、蒸れやすい環境、皮膚のバリア機能の低下などが重なることで成立します。
◎白癬菌はどこからうつる?
水虫にかかっている人の皮膚から落ちた鱗屑(りんせつ)=はがれ落ちた角質には白癬菌が生きたまま存在しています。裸足で歩いたバスマットや畳、スリッパなどを介して菌が他人に付着し、感染源になります。
◎すぐに感染するわけではない
菌が皮膚に付着しても、すぐに水虫になるわけではありません。傷ついた角質から菌が侵入し、高温多湿な環境で増殖できたときに感染が成立します。「白癬菌が付着して24時間以上放置された状態」がリスクとなります。
◎高温多湿の季節は注意が必要
白癬菌は高温多湿な環境を好むため、梅雨から夏にかけての季節に症状が悪化しやすくなります。
■水虫の種類と主な症状
水虫は見た目だけでなく、かゆみや痛みが起こり、日常生活への影響も考えられます。
◎タイプ別の特徴
いずれのタイプも、放っておくと爪にも菌が広がり、「爪水虫(爪白癬)」を引き起こすことがあります。
「小水疱型(しょうすいほうがた)」
足の裏に小さな水ぶくれができ、暖かい季節に片足から始まることが多いです。初期はかゆみが少ないものの、症状が進むと強いかゆみに変わります。水ぶくれが乾いて皮がむける頃にはかゆみは治まりますが、その皮にはたくさんの菌が潜んでいます。
「趾間型(しかんがた)」
足の指の間が白くふやけて皮がむけるタイプです。赤くただれたり、水ぶくれができることもあり、こすれによる痛みも出やすいのが特徴です。季節が涼しくなると自然と落ち着いてきます。
「角質増殖型」
足の裏全体が固く厚くなり、かかとなどにひび割れができて痛むことがあります。年中見られるタイプで、特に冬はひび割れが悪化しやすく、見た目が乾燥や老化と間違われやすいので注意が必要です。
◎水虫は足だけじゃない?手や爪、頭にもできる白癬の症状
白癬菌は皮膚や爪、毛にまで感染し、体のさまざまな場所に症状を起こします。
「手白癬(てはくせん)」
手のひらに小さな水疱や皮膚のめくれが見られることがあります。皮膚が硬く厚くなるのも特徴で、足の水虫を触った手から感染することが多く、手だけに現れるのは比較的まれです。
「爪白癬(つめはくせん)」
「爪水虫」と呼ばれ、爪の縁から菌が侵入して爪が白濁し黄ばみや変形を起こします。進行すると爪は厚くもろくなり、中高年層に多く発症します。
「体部白癬(たいぶはくせん)」
「ゼニタムシ」とも呼ばれ、胸や腹部、腕や脚などに赤く丸い発疹ができ、強いかゆみとともに環状に広がるのが特徴です。中心部が治癒したように見えることもあり、動物や人からの接触感染でうつるケースもあります。
「股部白癬(こぶはくせん)」
「インキンタムシ」とも呼ばれ、股間や太ももの付け根に円形の赤い発疹が現れます。かゆみが強く、湿気の多い場所にできやすいため、汗やムレが多い季節に再発しやすい傾向があります。
「頭部白癬」
「しらくも」と呼ばれ、頭皮に白癬菌が感染するとその部分の髪が抜けて、フケのような白いかさぶたが目立ちます。現在は稀な病気ですが、子ども同士の接触を通じて感染することもあります。
■水虫はうつるのか?
水虫は、主にヒト好性の白癬菌によって起こり、人から人へとうつる病気です。家庭内や公共施設、銭湯、ジム、宿泊施設など、裸足で歩く環境では特に注意が必要です。
家族の誰かが水虫を患っている場合、共用しているバスマットやスリッパ、畳などを介して感染する可能性があります。高齢者や免疫力が低下している人は、症状が出にくいため、気づかぬうちに感染を広げるかもしれません。
■水虫は誰でもかかる感染症
水虫は決して「汚い人がかかる病気」ではありません。白癬菌はどこにでも存在し、誰でも感染しうるリスクがあります。特に、梅雨から夏にかけては注意が必要です。
足の蒸れや傷に気をつけ、毎日の生活習慣で予防に努めましょう。症状に気がついたら、早めに対応することが大切です。まずはお気軽にご相談ください。