大腸内視鏡検査(いわゆる大腸カメラ)は、大腸がんをはじめとする病気の早期発見に有効な検査として、医療現場で広く行われています。しかし、この検査に欠かせない「下剤」の服用に、不安や抵抗を感じる方が少なくありません。
「量が多くて飲みきれない」「味が苦手」「つらくて検査自体を避けてしまう」という声もよく聞かれます。
この記事では、検査前に使われる下剤の種類と特徴、そして楽に飲むための工夫について詳しく解説します。
目次
■大腸内視鏡検査で下剤が必要な理由
大腸内視鏡検査では、カメラで腸の内部を観察しますが、腸内に便が残っていると正確な診断ができません。ポリープや早期のがんを見逃さないためにも、検査前に腸内をきれいにする「前処置」として下剤の服用が必要不可欠です。
腸がきれいな状態であれば、検査時間も短くなり、再検査のリスクも下がります。逆に、前処置が不十分な場合は検査自体ができないこともあり、体への負担や費用も増してしまいます。
■下剤が「つらい」と言われる3つの理由
多くの方が下剤をつらいと感じるのは、以下のような理由があります。
1. 飲む量が多く、時間もかかる
2リットル近い液体を1〜2時間で飲むのは、普段あまり水分を摂らない人にはかなりの負担です。途中で気持ち悪くなってしまう人も少なくありません。
2. 味が合わない
下剤は、人工的な塩味やフルーツ風味が多く、「どうしても受け付けない」「吐き気がする」と感じる方もいます。
3. 排便回数が多く、疲れる
下剤が効いてくると、10回以上トイレに駆け込むこともあり、外出はもちろん、自宅にいても不安になるケースがあります。
■一般的に使用される下剤の種類と特徴
液体タイプから錠剤タイプまでさまざまな種類があり、それぞれ洗浄力や飲みやすさが異なります。つらさを軽減するためには、下剤の種類を理解し、自分に合った方法で飲むことがとても重要です。
ここでは医療機関で一般的に処方されている代表的な下剤について紹介します。
◎モビプレップ
モビプレップは、多くの施設で標準的に使用されているバランス型の下剤です。梅風味で比較的飲みやすく、1リットルの下剤と追加の水分(500ml)を組み合わせて服用します。腸管洗浄力が高く腎臓への影響も少ないため、負担を抑えつつ、精度の高い検査が期待できます。
◎マグコロールP
スポーツドリンクのような味で、比較的飲みやすいとされる下剤です。味に癖が少ないため飲みにくいという負担が軽減します。ただし、洗浄力はやや劣るため、便秘の方は事前準備が必要なケースがあります。
◎プルセニド
こちらは刺激性の下剤で、便秘気味の方が検査前日や数日前から内服するために使用されます。マグコロールPなどの腸管洗浄剤の効果を高める補助的な役割を担います。センナ由来で、市販薬としても入手しやすい薬です。
■下剤の飲み方にコツはある?つらさを和らげる工夫
「下剤を飲みきれるか不安…」という方に向けて、少しでも楽に飲むための方法をいくつか紹介します。
◎飲む前に下剤を冷やしておく
冷やすことで、独特の味やにおいが和らぎ、飲みやすくなることがあります。ただし、冬場や冷え性の方は身体への負担に注意が必要です。
◎ストローで喉の奥に流し込む
コップで直接飲むと口全体に味が広がりやすいですが、ストローを使うことで味覚への刺激を減らし、スムーズに飲みやすくなります。
◎飴やガムを併用する
味がどうしても苦手な場合は、下剤を飲む前後に無糖の飴やガムで口直しをするのも一つの手です。ただし、医師に確認のうえで実践しましょう。
◎検査数日前からの準備も大切
大腸内視鏡検査では、前日の下剤だけでなく食事内容も下剤の効果に大きく関わります。消化の良いものを中心にした「低残渣食」を2〜3日前から意識することで、下剤の効果が高まり排便もスムーズになります。
例えば、お粥や素うどん、白身魚、卵料理などがおすすめです。食物繊維の多い野菜、海藻、揚げ物などは控えた方がよいでしょう。
■大腸内視鏡検査の下剤は工夫次第で「つらさを軽減する」ものに
「大腸内視鏡検査の下剤はつらい」と感じる方は少なくありません。現在では様々な下剤の種類があり、自分に合ったものを選べます。
モビプレップのように洗浄力とバランスに優れたもの、マグコロールPのように飲みやすさを重視したもの、プルセニドのように補助的に使えるものなど、選択肢は豊富です。
大腸内視鏡検査は、病気の早期発見にとってとても大切な検査です。「下剤がつらそう」「飲めるか不安」と感じている方でも、下剤の種類や飲み方の工夫によって、意外とスムーズに検査を受けられるかもしれません。
わたしたちのクリニックでは、患者様一人ひとりに合わせた下剤の提案やサポートを行っています。不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。