蕁麻疹は、突然皮膚に赤い膨疹が現れ、強いかゆみを伴う皮膚疾患です。多くの方が一度は経験したことがあるのではないでしょうか?そのため、原因や症状、対処法について知っておくことは重要です。
この記事では、蕁麻疹の原因や種類、症状、対処法について詳しく解説します。また、どの診療科を受診すべきかについても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
■蕁麻疹の原因
蕁麻疹は、皮膚の一部が赤くなり、盛り上がって痒くなる状態のことです。皮膚の中の小さな血管が一時的に膨らみ、血液の液体成分が周囲に漏れ出すことで起こります。このため、皮膚が赤く見えたり、腫れたりします。
皮膚の血管の周りには「マスト細胞」という細胞があり、これが何らかの刺激を受けると放出されるのが「ヒスタミン」という物質です。ヒスタミンは血管を広げ、血液の液体成分が漏れ出しやすくなり、さらに痒みを引き起こします。
要因として考えられるのは、アレルギー反応や物理的な刺激、運動、疲労、ストレスなどです。ただし、原因が特定できない場合もあります。
急性のタイプや特定の機会に一致して時々現れるタイプでは、原因を特定できることがほとんどです。しかし、1ヶ月以上も毎日のように現れては消えるものは、原因を特定するのが難しくなります。
【原因となるもの】
食物 |
魚介類: サバ、マグロ、サンマ、エビ、カニなど 肉類: 豚肉、牛肉、鶏肉など 卵・乳製品: 鶏卵、牛乳、チーズなど 穀類・野菜: 大豆、小麦、ソバなど |
添加物 |
人工色素: 黄色、赤色など 防腐剤: パラベンなど |
薬剤 |
抗生物質、解熱鎮痛薬、咳止めなど |
植物・虫 |
イラクサ、ゴム、蜂など(触れたり刺されたりして起きる) |
感染 |
寄生虫、真菌(カビ類)、細菌、ウイルス |
物理的刺激 |
機械的擦過・圧迫、寒冷、日光、温熱、振動など |
身体的刺激 |
運動・発汗 内臓・全身性疾患: 血液疾患、膠原病、血清病など 疲労・ストレス: 身体的なもの、精神的なもの |
※蕁麻疹(じんましん) Q7– 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
蕁麻疹は、特定の体質と外的要因が組み合わさったときに現れることがあります。特定の食べ物、例えば小麦製品やエビを摂取した後に運動すると、蕁麻疹や血圧の低下、気分の悪さ、呼吸困難などのアナフィラキシー症状が現れることもあります。このような場合、原因となる食べ物や運動のいずれかを避けることで、症状を予防することが可能です。
■蕁麻疹の種類
原因や症状の現れ方にはいくつかの種類がありますが、これらは必ずしも単独で起こるわけではありません。複数の原因が関係したり、異なるタイプが同時に現れることもあります。
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急性蕁麻疹
細菌やウイルス感染が原因となることもあります。発症してから1ヶ月以内に、ほぼ毎日症状が現れます。
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慢性蕁麻疹
1ヶ月以上続く蕁麻疹で、毎日のように症状が現れます。原因が特定できないことが多いのが特徴です。
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物理性蕁麻疹
物理的な刺激(例えば、擦ったり、圧迫したり、寒さや暑さ、日光、振動など)によって引き起こされます。
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コリン性蕁麻疹
入浴や運動など、汗をかくと現れる蕁麻疹です。小さな膨らみが特徴で、特に小児や若い成人に多く見られます。
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アレルギー性蕁麻疹
特定の食べ物や薬、昆虫などに含まれる物質(アレルゲン)に反応して起こります。アレルゲンに結合するIgEという血清蛋白が関与しています。
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イントレランス
アスピリンなどの薬や食品中の特定の成分に反応して起こる蕁麻疹で、IgEが関与しないタイプです。
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血管性浮腫
唇やまぶたなどが突然腫れあがり、2〜3日かけて消える症状です。かゆみを伴わないことが多く、稀に遺伝性のものもあります。
※参考:蕁麻疹(じんましん) Q11 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
■蕁麻疹の症状
皮膚の一部が突然赤く盛り上がり、しばらくすると消え、通常の皮膚に戻ります。名前の由来は、イラクサ(蕁麻)の葉に触れたときに似た症状が出ることから来ています。
主な症状は痒みです。チクチクとした感じや、焼けるような感じがするかもしれません。赤いブツブツや膨らみは通常数十分から数時間で消えますが、場合によっては半日から1日続くこともあります。
症状がひどい場合は、新しいブツブツが次々と出てきて、常に皮膚に症状があるように見えることが特徴です。出たブツブツが何日も消えず、茶色くなったり、表面がガサガサしたりする場合は、別の病気の可能性があります。
膨らみの大きさは1〜2mmの小さなものから、手足全体に広がる大きなものまでさまざまです。また、形も円形、楕円形、線状など色々ありますが、形自体には特に意味はありません。
■蕁麻疹の対処法
◎原因を避ける
特定の食べ物やストレスが原因になることがあります。原因や悪化させる要因を見つけ、それらを避けることが大切です。
◎薬による治療
蕁麻疹の多くは、体内のヒスタミンという物質が原因です。ヒスタミンが血管や神経に作用して、かゆみや腫れを引き起こします。これを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使います。
外用薬(塗り薬)は、かゆみを少し和らげる程度の効果しかありません。内服薬(飲み薬)や注射薬を使用するとより効果的です。
ただし、抗ヒスタミン薬の副作用として、眠気が出ることがあります。また、前立腺肥大や緑内障がある人は症状が悪化することがあるため注意する必要があります。最近では副作用が少ないものも多くなったので、学校や仕事などで眠気が心配という方は、医師に相談してください。
また、漢方薬や免疫を調整する薬も、症状に応じて補助的に使うことがあります。
◎日常生活でできる対策
疲労やストレスを溜めないようにすることが大切です。魚介類や肉類は新鮮なものを選び、防腐剤や色素を含む食品は控えめにしましょう。
■何科を受診?
蕁麻疹が出た場合、まずは皮膚科を受診するのが一般的です。皮膚科の医師は、原因や適切な治療法を見つけるのに専門的な知識を持っています。ただし、呼吸が苦しい、腹痛や下痢があるなどの症状がある場合は、内科(子どもなら小児科)を受診することも考慮してください。
■まとめ
蕁麻疹は身近な病気ですが、かゆみやヒリヒリ感が続くと、日常生活に支障をきたすことがあります。大人が突然発症した場合、ストレスや疲労のサインであることもありますが、他の病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。つらい症状が続く場合は、ひとりで悩まずにご相談しください。