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2日分とも陰性でも、便通の変化が続くとき
先月の健診で、便潜血検査は2日分とも陰性でした。それでも、ここ3週間ほど便秘と軟便をくり返している。父が60代で大腸がんの治療を受けていれば、気になるのは自然なことです。陰性の結果だけでは、いま出ている症状の原因まではわかりません。この記事では、2つの検査の違いと、受診時に伝えておきたい情報を整理します。
この記事の要点まとめ
- 便潜血検査は便に混じる血を調べる検診です。結果が陰性でも大腸に病気がないとは言えず、便の出方が変わったわけもわかりません。
- 便秘や軟便が続く場合は、症状の経過や血便、体重減少、父の診断年齢などを医師に伝えて相談します。
- 大腸カメラの要否は診察で判断されます。前処置や鎮静薬、帰宅方法、費用、結果説明について事前に確認しましょう。
検出できるものの違い|便潜血陰性でも大腸カメラが不要とは限らない

便潜血検査は血液を調べ、大腸カメラは粘膜を観察する
便潜血検査は、便に混じったごくわずかな血を手がかりにする検査です。大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は、おしりの穴から細いカメラを入れて、腸の内側をおおう粘膜を見る検査です1。
調べている対象が違うため、一方の結果をもう一方の代わりにはできません。なお大腸カメラも、腸に残った便や見えにくい部位の影響を受けるため、すべての病変を確認できるとは限りません。
出血していない病変では、2日分とも陰性になることがある
大腸がんや大腸ポリープは、いつも出血しているわけではありません。採便した日に出血がなかったり、出血の量が検出の基準に届かなかったりすると、病変があっても陰性と出ます。これを偽陰性(本当は病変があるのに陰性と出ること)と呼びます2。
免疫法で大腸がんを見つける力は、病変の進み具合や調べ方によって幅があり、以前の化学法と同じ程度か、それを上回るとされています3。それでも、採便した日に出血がなければ、病変があっても陰性と出ることがあります。
ポイント
2日分とも陰性でも、「大腸に病変がない」ことの証明にはなりません。
症状がない人の検診と、便通の変化を調べる診療は別
便潜血検査は、症状のない人の中から精密検査が必要な人を見つける「検診」のための検査です。症状がある人の原因を調べる目的では、検査の精度が十分に確かめられていないと指摘されています4。
健診のあとに便の出方が変わったなら、前に陰性だったことだけで原因を決めず、まずは診察で相談しましょう。便潜血検査をやり直しても、診察や詳しく調べる検査の代わりにはなりません。
受診判断の軸|便通の変化・父の大腸がん歴をどう伝えるか
便秘と軟便が続くときは、血便・体重減少・貧血も確認する
便通の変化だけで大腸がんと決めることはできません。ただ、原因を診察で確かめる理由にはなります。受診前に、次の点を思い出しておくと話がスムーズです。
- いつから、以前の便通とどう違うか
- 腹痛やお腹の張りがあるか
- 血便や黒っぽい便が出ていないか
- 意図しない体重減少がないか
- 健診で貧血を指摘されていないか4
多量の出血、ふらつきや失神、強い腹痛や嘔吐がある場合は、通常の予約を待たずに、救急の受診も含めて対応を考えてください。
父の診断時年齢と、自分のポリープ切除歴を伝える
親やきょうだいに大腸がんの人がいる場合は、受診時にそのことを伝えましょう。診断されたときの年齢や、大腸がんになった血縁者の人数も、相談するときの手がかりになります。
伝えたいのは、父が「治療を受けた年齢」ではなく「診断された年齢」です。ほかの血縁者の大腸がん歴、ご自身のポリープ切除歴、以前の大腸カメラの時期と結果もあわせて伝えましょう。わからない部分があっても、調べ終わるまで受診を延ばす必要はありません。
定期検診を続ける人と、陰性でも診察を受けたい人
| 状況 | 便潜血検査の役割 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 症状がなく、リスクが高いと言われていない | 検診として使う2 | 決められた間隔で検診を続ける |
| 陰性でも便通の変化などがある | 症状の原因は判断できない4 | 次の健診を待たずに診察で相談 |
| 家族に大腸がんの人がいる | 家族の状況もふまえて考える | 家族が診断された年齢などを伝える |
| ポリープを切除したことがある | 切除後の経過は便潜血だけではわからない | 前回の結果をもとに次の検査を相談 |
便潜血をもう一度調べることと大腸カメラは、好きなほうを選べるわけではありません。3週間ほど便の出方が変わったままで、父が大腸がんになったことがあるなら、表の2行目と3行目の両方に当てはまります。大腸カメラが必要かどうかは、症状がいつからどう続いているかを聞いたうえで医師が判断します。
負担と受診手順の違い|下剤・仕事・帰宅方法を先に確認する
下剤を飲む時間と、仕事を休む範囲を相談する
大腸カメラの前には、食事の調整と、腸の中を洗い流す下剤(前処置)が必要です。便が残ると粘膜が見えにくくなるためです。
服用中は何度も排便が続くので、その時間に勤務や通勤が重ならない予定を組みます。休む日数は検査の時刻や処置の有無で変わるため、予約時に相談してください。食事や下剤の飲み方は、医療機関で受けた説明に沿って準備します。
鎮静薬を使う場合は、当日の運転を予定しない
検査当日の帰宅方法は、受ける検査に応じて医療機関の説明に沿って決めます。車で通勤している方は、送迎や帰りの手段を前もって決めておきましょう。
一般的には、鎮静薬を使えるかどうか、付き添いの要否、検査後に休む場所や時間を、予約時に医療機関へ確認します。検査中のお腹の張りや不快感には個人差があり、事前に次のような合併症について説明を受けます。
- 検査中・検査後のお腹の張りや痛み
- 生検やポリープ切除のあとの出血(数日たってから起こることもあります)
- まれに穿孔(腸に穴があくこと)
保険の扱いと、検査後の結果説明まで確認する
症状があり医師が必要と判断した検査は、保険診療となるのが一般的です。症状のない方が希望して受ける場合は、自由診療(公的医療保険が適用されない)となることもあります。
大腸カメラでは、検査そのものに加えて、前処置や検査後に休む時間も見込んで予定を立てます。予約時には来院から帰宅までの流れと、次のような検査内容に応じた費用を確認しましょう。
- 保険を使い、腸の中を見るだけの場合:診察や検査などにかかる費用
- 保険を使い、生検(組織を採る検査)もする場合:組織を採って調べる費用を含む金額
- 保険を使い、ポリープも切除する場合:切除や採った組織の検査を含む金額
- 保険を使わず、希望して検査を受ける場合:料金に含まれる内容と、別にかかる費用
いずれも診察料、前処置の下剤、鎮静薬、病理検査(採った組織を顕微鏡で調べる検査)の有無などで変わります。これらは一般的な費用の項目であり、当院の費用を示すものではありません。実際の費用は医療機関により異なり、一般的には検査や処置の内容に応じて案内されます。
組織を採る生検やポリープ切除があると、費用の内訳、結果説明の時期、検査後の生活の制限が変わる場合があります。
東郷町の当院へ相談する際に用意したいメモ
便の様子を口で説明しにくい場合は、メモを医師に見せる形でもかまいません。
- いつから症状があるか、便が出る回数とその様子
- 便に血が混じっているか
- 父が何歳のときに大腸がんとわかったか
- 健診の結果が書かれた用紙と、いま飲んでいる薬
当院に限らず、外来診療の予約方法や予約の要否は医療機関により異なります。ネット予約や電話など、利用できる方法を事前に調べておくと、受診までの流れを整理しやすくなります。予約がない場合の対応も医療機関ごとに異なります。
症状がなければ決められた検診を続け、便通の変化や家族歴が気になる方は次の健診を待たずに診察で相談する。この違いを目安に、受診の必要性や時期を考えてみてください。
よくある質問
Q. 便潜血検査で陰性でも、大腸がんの可能性はありますか?
A. あります。病変から出血していない日に採便すると、陰性と出ることがあるためです2。可能性の大きさは検査方式や年齢、家族歴などで異なり、一律には示せません。症状がある場合は診察でご相談ください。
Q. 便潜血が陽性でも、大腸カメラで異常がなかった場合はどうなりますか?
A. 痔や粘膜の小さな傷など、がん以外の原因で陽性になることもあります。その後の検診や検査をどの間隔で受けるかは、検査結果やご本人の状況をふまえて医師が判断します。
Q. 便潜血検査で毎年引っかかるのはなぜですか?
A. 出血しやすい部位が腸や肛門にある場合などに、くり返し陽性になることがあります。前回異常がなかったとしても、今回の陽性を自己判断で見送らず、医師にご相談ください。
Q. 40代・50代では、大腸カメラを何年おきに受けるとよいですか?
A. 異常がなく気になる症状もない方が、決まった間隔で大腸カメラを受ける必要があるとは限りません。ポリープを切除した方は、数や大きさ、採った組織を調べた結果に応じて次の検査をいつ受けるか決めます。家族に大腸がんになった方がいるかもふまえ、前回の結果をもとに医師と相談します。
Q. 便潜血検査が陰性だった場合、その後はどうなりますか?
A. 症状がなければ、決められた間隔で検診を続けるのが基本です。陰性でも便の出方が変わったり、便に血が混じったりするときは、次の健診を待たずに診察で相談してください5。
参考文献
1. 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けられる方へ | 国立がん研究センター中央病院. https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/gastrointestinal_endoscopy/110/index.html
2. Meklin J, Syrjänen K, Eskelinen M. Fecal Occult Blood Tests in Colorectal Cancer Screening: Systematic Review and Meta-analysis of Traditional and New-generation Fecal Immunochemical Tests. Anticancer Research. 2020. PMID: 32620599 / DOI: 10.21873/anticanres.14349
3. 大腸がん検診:[国立がん研究センター がん情報サービス 医療関係者の方へ]. https://ganjoho.jp/med_pro/cancer_control/screening/screening_colon.html
4. Lee MW, Pourmorady JS, Laine L. Use of Fecal Occult Blood Testing as a Diagnostic Tool for Clinical Indications: A Systematic Review and Meta-Analysis. The American Journal of Gastroenterology. 2020. PMID: 31972617 / DOI: 10.14309/ajg.0000000000000495
5. 大腸がん検診について:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]. https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon.html
6. Roos VH, Mangas-Sanjuan C, Rodriguez-Girondo M, et al. Effects of Family History on Relative and Absolute Risks for Colorectal Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis. Clinical Gastroenterology and Hepatology. 2019. PMID: 31525516 / DOI: 10.1016/j.cgh.2019.09.007
愛知医科大学卒業
愛知医大第一内科
袋井市立袋井市民病院
聖霊病院
内科・消化器内科
聖霊病院 医務局長
三九朗病院 内科・消化器内科
2016年
わごうヶ丘クリニック 院長
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
日本人間ドック学会・認定医
日本医師会・認定健康スポーツ医
日本医師会・認定産業医
日本スポーツ協会・スポーツドクター
NPO法人日医ジョガーズ連盟(ランニングドクター)
点滴療法研究会
